平成3年度 研究報告 大分県工業試験場
4 圧縮変形における超音波の影響
1 緒 言
超音波振動を塑性加工に利用する試みは、Bl aha やLangnecker が亜鉛単結晶の引張り試験に超音波 振動を付加し、応力の低減が確認されて以来30数年 になるが、実用化されているのは極一部であり、他 の加工にはあまり利用されていない。これは非定常 状態の加工における超音波振動の効果があまり顕著 でないこと、強力な超音波振動が高価なこと、付加 構造が複雑であること、ニッケル振動子のエネルギ ー変換効率が低いこと等が原因と考えられる。
しかし、材料技術の進展により、エネルギー変換 効率の高いPZT振動子が容易に入手できるように なってきており、超音波振動が安価に入手できる環 境になってきた。一方金属の塑性加工において、加 工力の低減、加工率の増大、加工精度の向上等を図 ることはNear Net Shape加工やNet Shape加工 を可能にするものである。
そこでPZT振動子を使って超音波振動を非定常 状態の塑性加L工に適用するための基礎研究を行い、 超音波技術の塑性加工への応用実用化を図るととも に新しい応用の道を探る。その予備試験としてアル ミニウム合金の圧縮変形において超音波振動を付加 し、その効果の程度を調べた。
2 実験方法 2.1 実験装置
超音波振動の付加機構は図1に示すように、発振 器よりの進行波出力(Ef )を周波数整合器を通して 振動子に付加する。振動子は周波数約20kHz のチタ
ン酸ジルコン鞍鉛のボルト締めランジエバン型振動 子(日本特殊陶業㈱製、D4520)で、この振動子より 発振器への反射入力(Er )の差が負荷吸収電力とな
る。振動子のエネルギ」変換効率を考慮すると、実 際に試験片に付加される超音波振動はこの負荷吸収 電力と異なるが、ここでは負荷吸収電力を試験片圧 縮時の付加超音波出力(E/′ w)とした。
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図1超音波発振中計測模式図
また、振動子の取付及び圧縮治具の概略図を図2 に示す。超音波振動は振動子からコーン、ホーンを 経て試験片へ付加される。
①パンチ ②試験片 ③ホーン
④フランジ
⑤フランジ受け ⑥コーン
⑦振動子
図2 超音波振動付加圧縮治具
2.2 実験条件
平成3年度 研究報告 大分県工業試験場
34%(i )=8.7>5.7kN
)となっているが、ど=80%
ではE二200Ⅵr で最大R=8%(P=32.1→29.6
kN
)となり、E=3O
O
W
では逆にR=6%とわずか
ながら小さくなっている。
また、圧縮荷重曲線にはP=6、7、8kN
付近
で極大極小を示す変動がみられた。この極大値は超
音波振動を付加しない場合の荷重曲線より約400N
高くなっている。この極値を示す点と圧縮荷重とが
ほぼ一致した亡=60%の場合に最大の効果が現れた
ようだ。
を付加しない場合と付加した場合の最大圧縮荷重を
測定した。付加超音波出力はE=100、200、300W
と
した。
また、圧縮荷重をP=3、4、8、26kN
としたと
きの据込率と付加超音波出力との関係を調べた。こ
の時共振のためか発振器がシステムダウンし、最大
付加超音波出力はE≒200W
程度しか付加できなか
った。
圧縮加圧速度は0.5m
m
/′
s ecとした。超音波振動の
付加により試験片の温度上昇が若干見られたが、加
圧時間は最大で約15秒であり、温度の上昇は無視で
きる程度であった。
据込率 ⊂):亡=20%
[]
△: 二40%
」」・ 一【 0
△
● 二 ∵ 80%
瓜]
○
台
[]
●
●
3 実験結果及び考察
図3に圧縮荷重と付加超音波出力の関係を、図4
に超音波振動付加による圧縮荷重低減量を、付加し
ない場合の圧縮荷重に対する低減率として示す。
超音波振動を付加した場合、超音波出力が増大す
るに従って圧縮荷重はばぼ直線的に減少しており、
最大荷重低減率は、据込率ど=20、40、60%に対して、
付加超音波出力E=300W
のときで、それぞれR=
2O
%(P=3.55→2.85kN
)、29%(P=4.8>3.4kN
)、
据込率
3j
〔⊃:ど=20%
△ : 二40%
U
:=60%
○ :二80%
●
≠ j
E
[]
[コ
□
△
0
100
200
300
付加超音波出力 E′ /W
図4 付加超音波出力と荷重低減率
次に圧縮荷重を・・・′ ・■ ・一息こした場合の据込率の変化を 調べたのが図5である。
超音波振動付加の効果は、圧縮荷車がl 〕=3、4
kN
のとき顕著にみられ、超音波振動を付加しない
場合に比べて、据込率はそれぞれ£=10→3()%、30→
57%と大きく増加しているが、P二8、26kN
ではそ
の効果は殆ど見られず据込率の増加はみられない。
本実験条件の範囲においては、据込率を一定にし
た場合と圧縮荷重を一定にした場合の超音波振動付 加の効果は据込率£=60%付近で大きく異なった結 果となっている。£=60%より下では超音波振動の
効果は、荷重低減の面でも据込率増大の面でも大き
な効果が現れているが、ど=60%より上では効果が 殆ど見られない。
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Z
ミ
d
圃経度出
0
100
20り300
付加超音波出力 E/′ w
平成3年度 研究報告 大分県工業試験場
或いは圧縮荷重が大きい場合に、試験片寸法が振動
系に対して余りにも小さくなり過ぎて、無視できる
程度の寸法となり超音波振動の効果が現れなかった のではないか考えられる。
〕0
.0 ●
● m ●[コ
△
△
△
△
圧縮荷重
△ f ( 司 /′(\■」 0 0 J ゝ: =4 口:=8 kN ⑳二 =2 6kN
4 結 言
超音波振動の塑性加工への応用を図るための予備
試験として、チタン較ジルコン酸鉛のボルト締めラ
ンジエバン型振動子を用いて、純アルミニウム材の
超音波付加圧縮試験を行った結果以下の知見を得
。
(1)据込率一定の場合、付加超音波出力の増加と
ともに圧縮荷重は減少し、据込率己二郁%、付加超音
波出力E=3()nWで34%の荷重低減となった。
(2)圧縮荷重一定の場合、圧縮荷重i )=3、4kN
では据込率がそれぞれど=10→30%、30→57%と著
しく増大したが、P=8、26kN
では殆ど効果がなか
った。
(3)本試験の範囲において据込率ど=60%付近に 特異点が存在する。
㌔\り
静量感
0 100 200 300 付加超音波出力 E′ /′ w
図5 付加超音波出力と据込率
この荷重低減及び据込率増大の効果において、摩
擦抵抗が低減すれば、圧縮荷重は低減し、据込率は
増大することになる。ただ素材自身の限界据込率へ
達した場合は折込率の増大率はあまり大きくないと
考えられる。さらに触込率が大きくなり、径/高さ
の比が大きくなると摩擦抵抗が大きくなり、圧締変
形における見かけの変形抵抗が大きくなる。そのた
め圧縮荷重が大きくなると考えられるが、超音波振
動を付加しない場合の圧縮荷重と差がないことから
すると、圧縮荷重の大きい領域においては超音波振
動付加の効果が現れていないと言える。
また、摩擦抵抗の変化は加圧治具と試験片の接触
面において微視的にハンマーリングに起因すると考 えられる。しかし、圧縮荷重が大きくなってある限 度を越えるとこのハンマーリングが抑え込まれ摩擦 抵抗の軽減効果がなくなると考えると、据込率ど=
80%のときに荷重低減効果が小さいこと、触込率
ど二60%以上に相当する圧縮荷電P=8、26kN
のと
きに据込率の増加が見られないことの理由の一つと 考え了う れる。
さらに圧縮力廿工による試験片寸法の変化により、
振動系全体の共振特性が変化するとともに、据込率
〝 44 −
本予備試験をもとに、チタン酸ジルコン蟹鉛のボ ルト締めランジエバン塑振動子を用いた、金属塑性
加⊥における超音波振動付加の効果を調べるため
に、試験片\」▲ 法やホーン、コーン形状の影響、振動 子周波数の影響等についての研究を進めるととも
に、本研究の基礎となるH
l aha効果についても、試
験片寸法の影響を考慮して、引張り試験を行い Bl aha効果の確認試験を行う。
参考文献
1)高橋勘次郎砂深即成一・渡辺哲哉申久保田喜郎: 高周波の⊥業への応月㍉ 東京電機大字出版局,
(1977)
2)実吉純一。菊池善充。能本乙彦:超音波技術便 覧,R刊工業新聞社,(1978)